国や地方自治体のレッドデータブックに記載されている植物や動物が、様々な理由により、生育・生息地からの移植を余議なくされる場合があります。このような場合、元々の生育・生息地と同様の環境条件下にある立地を調査し、個々の対象種の性質に合った移植方法を検討するなど、移植先での活着率を高めるためにあらゆる手段を講じます。移植後も生育・生息状況についてモニタリング(追跡調査)を行います。モニタリングデータは、移植方法の検証や回復処置方法などの管理計画立案に役立てます。
多摩丘陵に生育するタマノカンアオイの移植事例をご紹介します。移植した個体数は77株で、移植先はタマノカンアオイが生育する北向き斜面地です。移植の際に重要なことは、根茎を傷めないように丁寧に掘り取ることです。また、水が得られにくい山地の中であっても、貴重種の移植を行うときは必ず潅水を行うことです。平地ではもちろん、山地や急斜面地でも潅水を行うことが活着率を高めることにつながります。平成18年に移植を行いましたが、現在も順調に生育しています。