タマムシ飼育記
あるタマムシとの出会い
地理情報システム担当です。(昆虫の専門技術者による記事ではないことをご了承ください)
6月上旬のある日のこと、家の近所にある里山の公園を歩いていると、エノキの高木の脇の園路上に一匹のタマムシ(ヤマトタマムシ)が落ちているのが目に入りました。
拾い上げてみると、後脚の2本を除く4本の脚がとれてなくなっていました。触角も片方が2/3ほど欠けています。一体なにがあったのでしょうか。6月上旬というと成虫の発生初期と思いますが、成虫になった矢先に鳥にでも食べられようとして格闘し、脚や触角が切れてしまったのかもしれません。
拾ったタマムシを木にとまらせてやろうと試みましたが、2本の脚では葉や枝につかまりながら歩くことができず、すぐに地面に落ちてしまいました。もう自然界では生きていくことができないのは明らかでしたので、連れて帰って飼ってみることにしました。(※採集禁止の場所ではありません)

飼育環境の用意
比較的のどかな地域にある我が家では、夏になると、色々な昆虫がやってきます。家の前で行き倒れているカナブンには昆虫ゼリーを与え、元気になると放します。地面にひっくり返っているアブラゼミも、樹液のよく出る植木に止まらせてやると、口吻を突き刺してよく飲み、いつの間にかいなくなっています。この夏は、キマダラカミキリやシロスジカミキリもやってきて、つかの間、楽しませてくれました。
今回我が家にやってきたタマムシは、調べてみるとメスでした。お腹の先が丸くなっているのがメス、三角に切れ込んでいるのがオスなのだそうです。タマムシを飼育ケースに入れ、餌を用意してやろうとネット検索。当然のことではありますが、ヤマトタマムシは主にエノキを食草とするので、昆虫ゼリーはNG。ゼリーを放り込んでおけばよかったカナブンなどに比べると、準備の難易度が一段上がります。とはいえ、エノキは近所の路傍などあちこちに生えており、調達には困りません。小枝を切り取り、長持ちするように水を含ませたティッシュで切り口を包み、ビニール袋でくるんで輪ゴムで留め、飼育ケースに入れておきました。このタマムシは歩行が不自由で、枝をたくさん入れると障害物となって動きづらそうにするため、あまり多くはしていません。

観察
飼育ケース内を観察してみると、後脚しかないので、体を支えながら自分で葉を食べるのがかなり難しいようでした。仰向けになって2本の後脚で葉をはさみ、なんとか口のところに持っていくというスゴ技も編み出して披露してくれましたが、自分で食べられるのは少量でした。こんな様子ですので、餌は手持ちで食べさせるしかないと一念発起。左手の親指に止まらせ、右手にエノキの葉を持ってタマムシの口に持っていくと、器用によく食べます。
当社のブログをご覧になる方は、生き物好きの方が多いと思いますが、タマムシが餌を食べているところを実際にご覧になった方はおられるでしょうか。じっくり観察してみると、タマムシの口は、左右に開く機構となっており、上下には微細な動く構造がついています。その隙間に縦方向に葉が入り、頭を上から下へと規則正しいリズムで動かしながら、順々にはさみで切るように食べ進んでいきます。プチプチと葉を切る音が聞こえます。2本の触角を交互に上下に振りながら葉に触れ、確かめながら食べている様子が分かります。
一度に食べる量は、3平方センチ前後という感じです(満腹になると葉から離れようとします)。それを一日に3回程度。食欲は旺盛で、本当はもっと回数を多く与えるのがよいように思いますが、世話できるのは勤務時間外となるため回数は限られます。野生下の健康な個体では、より多くの量を食べることでしょう。

飼育ケースは25cm×15cm×高さ15cm程度の小さいものですが、要介護のタマムシには十分広いようです。ケースは部屋の窓際に置いていますが、タマムシはケースの中で、日中、基本的に一番明るいほうを向いています。やはり明るい環境を好む種であることが分かります。タマムシは昼行性ですが、夜にもお腹はすくようで、深夜にガサガサと音がするので見てみると、暗闇の中で、自分で葉を食べようと格闘していることもあります。
水は特に与えなくてもよい(葉の水分だけでよい)と言われているようですが、ティッシュに水を含ませたものをケースに入れておくと、たまに、その上で口を動かして、水分を吸っているような様子がみられます。特に暑くなってくると、水分の用意は必要であるように思います。
長寿祈願
このブログを書いている時点で、タマムシが我が家に来て48日目。インターネットでタマムシを飼育されている方の記録を拝見すると、環境変化やストレスに弱く、なかなか飼育が難しい種のようで、ストレスで餌を食べないなど、数日で死んでしまうことも多いとのこと。その点、うちに来たタマムシは、なんとなく大らかな性格?のようで、2本の脚で私の指にしっかりつかまって、よく餌を食べてくれます。タマムシの成虫の寿命は1~2か月程度とのこと。2か月といわず、エノキの葉が黄色く色づいて散ってしまう頃まで長生きしてほしいと願っています。
お読みいただき、ありがとうございました。この夏、皆さんにも、生き物との素敵な出会いがありますように。
(地理情報システム担当 I)

