ビオトープ計画設計

本来、生物の生息空間を広く意味していた"ビオトープ"という言葉は、近年ではすっかり、公園や開発事業地などの中に設けられる生物の生息地という意味として定着しました。すなわち、小動物の生活空間を保全・再生することにより、生物多様性の維持に貢献する場であり、生物とのふれあいを通した自然教育・環境教育の場でもあります。ビオトープを計画する際には、その計画地の持つポテンシャルを知ることから始めます。地形や植生、現在の生物相だけでなく、土地の来歴や潜在的な生物相に基づいて、誘致対象となる生物を選定するとともに、それらの生物の生息に適した環境や、計画地のポテンシャルに適した環境を目標として、計画設計を進めていきます。

 

事例紹介

  • 国営昭和記念公園(東京都)において、トンボ類をはじめとする水生昆虫のための"トンボの湿地"を計画しました。湧水起源の湿地環境は、かつての三宝寺池や善福寺池のように、武蔵野の台地を代表する景観のひとつです。トンボは幼虫の時期に水中で生活しますが、流れの有無や水深、水生植物の有無、緑陰の有無など、種によって好む環境が異なります。そこで、国営昭和記念公園の"トンボの湿地"においても、多様な環境の創出に努めました。湿地の造成から20年以上が経過しましたが、公園で適切な管理が行われていることもあり、好適な環境が保たれています。現在では東京都のレッドリストに掲載されているキイトトンボやチョウトンボを始め、多くの種類のトンボの生息が確認されるようになりました。

  • トンボの湿地
    トンボの湿地

    キイトトンボ
    キイトトンボ

    チョウトンボ
    チョウトンボ